
院長:近江お気軽にご相談ください!
「最近、指がカクンと引っかかる感じがする」「登り終わった翌朝、指がうまく動かない」。そんな経験が続いていませんか。
クライミングを日常的に楽しんでいると、ある日突然、指の付け根あたりに違和感を覚えることがあります。じつはその症状、ばね指のサインである可能性があります。


ロッククライミングやスポーツクライミングの特性上、体重を指先で支える動作を繰り返すため、指への負荷は想像以上に大きくなります。その積み重ねが腱鞘炎を引き起こし、ばね指へと発展することが少なくありません。
このコラムでは、クライミングが関係するばね指のメカニズムと、その向き合い方についてわかりやすくお伝えします。


クライミングは指への集中的な負荷がとても大きいスポーツです。痛みの背景にある仕組みを理解することが、長く登り続けるための第一歩だと考えています
指には「屈筋腱」と呼ばれる細い腱が通っており、それをガイドするように「腱鞘(けんしょう)」という鞘(さや)状の組織が取り囲んでいます。
この腱と腱鞘がスムーズに動くことで、私たちは指を自由に曲げたり伸ばしたりできているのですが、クライミングでは、このデリケートな構造に繰り返しとても大きな負荷がかかり続けます。


指にはもうひとつ、とても重要な構造があります。それが、腱を支える「プーリー(pulley)」という仕組みです。腱がスムーズにスライドして力を効率よく伝えるための仕組みで、ベルトとズボンの通し穴に例えるとわかりやすいかもしれません。
通し穴が狭くなったり、ベルト自体が太くなったりすると、スムーズに通らなくなります。指でも同じことが起きます。過度なストレスが続くことで滑車システムの働きが低下し、ケガや障害につながっていくのです。


クライミング特有の握り方として「クリンプ(Crimp)」があります。第二関節を深く曲げ、指先に全体重をかける持ち方で、小さなホールドを保持するときに多用されます。
このクリンプの状態では、深指屈筋をはじめとする腱に約36kgもの負荷がかかるという研究報告があります。さらに、筋肉が引き伸ばされながら力を出す「伸張性収縮」と呼ばれる使われ方も重なることで、腱鞘への負担はさらに高まります。
繰り返しのクリンプによって腱鞘が炎症を起こし、内側が肥厚してくると腱が引っかかりやすくなります。これがばね指のはじまりであり、軽い引っかかり感こそが最初に体が発する重要なサインです。
指の状態を悪化させないためには、初期のサインを見逃さないことがポイントです。「そのうち治るだろう」と思いがちな変化の中に、ばね指の前兆が含まれていることは少なくありません。見逃した分だけ、回復までの時間も長くなってしまいます。
最もよく見られるのが、起床時に指が動かしにくく感じる「朝のこわばり」です。しばらく動かすと楽になるため見過ごしがちですが、これは腱鞘に炎症が起きているサインのひとつです。
「指の付け根を押すと痛い」「小さなしこりのような感触がある」「指を曲げるときにカクンという感覚がある」といった変化も初期症状として現れることがあります。こうした変化に早めに気づくことが、悪化を防ぐ上でとても大切です。
登っているときに「特定のホールドで指が痛い」「ムーブ中に力が入りにくい」と感じるのも、早期に注意すべき変化のひとつです。
痛みをごまかして続けることで腱鞘の炎症はじわじわと広がっていきます。早めに状態を評価してもらうことが、結果的に最短の回復につながります。
症状が軽いうちは「休んでいれば治るだろう」と感じるかもしれません。ですが、炎症が慢性化すると腱鞘の肥厚が進み、自然に回復しにくい状態になっていきます。
指がロックして動かなくなる「強直(きょうちょく)」の状態に進行すると、日常生活にも支障が出るほど機能が低下するケースもあります。そうなる前に対処できるかどうかが、回復の速さを大きく変えます。
「まだ大丈夫」と感じている段階でこそ、早めにアクションを起こすことがクライミングを長く続けるための近道です。


ばね指に対して当院では関節の動きのバランスをチェックした上で、どの筋肉が機能していないか、滑車システムのどの部分に問題があるかを評価したうえで、筋肉のバランスを整えていきます。
テーピングやIASTMといったツールも組み合わせながら、指の機能に多角的にアプローチします。
クライミングでは肩甲骨・体幹・前腕・手首・指が連動して動いています。どこかに硬さや機能低下があると、その分の負担が指に上乗せされていきます。
根本的な改善のためには、症状のある指だけでなく、肩や体幹を含めた身体全体の機能を評価することが大切な視点です。当院ではカイロプラクティックを基盤に、全体的なバランスを整えながらアプローチの優先順位を組み立てていきます。
状態に合わせて、アイシングや適切なストレッチ・エクササイズをご案内することも大切なプロセスです。「今どんなケアが必要か」「何をしてはいけないか」を正確に把握することで、無駄な遠回りを防ぐことができます。
施術と並行して自分でできるセルフケアを身につけることが、再発を防ぎながら長くクライミングを続けるためのベースになります。
「クライミングを完全にやめないと治らない」と考えている方も多いですが、必ずしもそうとは限りません。状態を正確に把握したうえで、負荷の種類や量を調整しながら継続できる場合もあります。
大切なのは「我慢して続ける」でも「完全に休む」でもなく、自分の体の状態を正確に理解したうえで判断することです。そのためにも、専門家によるきちんとした評価を受けることが出発点になります。
クライミングは長く楽しめるすばらしいスポーツです。指の小さなサインを放置せず、早い段階で状態を把握することが、結果的にいちばんの近道になります。一人で抱え込まず、気になることがあればいつでもお気軽にご相談ください。

