
院長:近江お気軽にご相談ください!
こんな経験をしたことはありませんか?ペットボトルのフタを開けようとした時、肘の外側にズキッとした鋭い痛みが走った…。タオルを絞るだけで肘が悲鳴を上げる…。「テニスなんてやっていないのに、なぜ?」と首をかしげながら日常生活を送っている方、実は多いです。
その痛みの正体は、テニス肘である可能性が高いです。テニスをしていないのにという疑問はごく自然なことで、むしろテニス未経験の方のほうが発症者の多くを占めているのが実情です。
今回は、その疑問にお答えしながら、肘の痛みが続く本当の理由と向き合い方をわかりやすくお伝えします。


「テニスをしてないのになんで?」という質問をよくいただきます


テニス肘の正式名称は「上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」と言います。難しい言葉ですが、一言で表すなら「肘の外側にある腱の付け根が炎症を起こしている状態」です。
手首を反らす方向に動かす時に使われる前腕の伸筋群が、肘の骨にくっつく部分、そこに繰り返しストレスが加わることで、細かな損傷が積み重なっていきます。
痛みの出方には個人差があって、「物をつかむとズキッとする」「ドアノブを回すたびに肘が痛い」「朝起きた時に肘がこわばる」など、症状は人によってさまざまです。進行すると安静にしていても痛みが続くようになり、前腕から手首にかけて不快感が広がることもあります。
ちなみに、よく耳にするゴルフ肘は肘の内側に炎症が起きるタイプ、野球肘は投球動作による肘全体へのダメージ、クライマー肘はロッククライミングによる指や腱への過負荷が主な原因です。テニス肘は「肘の外側」というのが大きなポイントになります。
テニス肘という名前のせいで誤解されがちですが、この疾患はスポーツをしていない方にも広く見られます。大切なのは、テニスのスイングに限らず「手首を使う動作の繰り返し」がすべて発症リスクになるという点です。日常生活のどんな場面に原因が潜んでいるのか、具体的に挙げてみます。
料理・洗濯・掃除は毎日欠かせない作業ですが、これらはすべて手首と前腕を酷使する動作の連続です。包丁でみじん切りをする、フライパンを持ち上げて振る、雑巾を絞る、一つひとつは些細な動きでも、毎日何十回と繰り返せば腱への負担はじわじわと積み重なっていきます。
少し意外なところでは、編み物でテニス肘になった方もいます。棒針を繰り返し動かす動作が前腕の伸筋群を慢性的に刺激するためで、趣味で楽しんでいた編み物が原因だったと気づいて驚かれる方もいらっしゃいます。
「これくらい大丈夫」と思いがちな動作ほど、気づかないうちにダメージが蓄積されているものです。
マウスを長時間クリックし続ける、キーボードを何時間も打ち続けるという動作は、前腕の伸筋群を慢性的に緊張させます。
特に「手首が少し反り気味になった状態でマウスを操作する」という姿勢は、気づかないうちに腱へのダメージを蓄積させていきます。「パソコン仕事をしていたら気づいたら肘が痛くなっていた」というケースは、近年増えています。
介護職、美容師、大工、調理師など、道具を使ったり重いものを持ち運んだりする仕事でも発症リスクは高まります。腕を繰り返し使う作業環境にある方は、それだけ腱へのストレスが積み重なりやすい状況にあると言えます。
「仕事を休めない」という事情もあって症状が慢性化しやすいのがこうした職種の特徴です。
テニス肘はとりわけ40代・50代の方に多く見られます。加齢によって腱の修復能力と弾力性が低下するため、それまで問題なくこなせていた動作でも組織がダメージを受けやすくなるからです。
「急に何もしていないのに痛くなった」という経験がある方も多いと思いますが、あれは突然起きたのではなく、それまでの積み重ねが限界を超えた瞬間に症状として表面化したものです。
ここで一つ、とても大切なことをお伝えします。テニス肘で「なかなか良くならない」「湿布を貼ってもすぐ戻る」という方に共通しているのが、肘だけを見ていることです。テニス肘の根本には、肘そのものではなく、肩甲骨・姿勢・体幹の問題が隠れているケースが多いです。
肩甲骨がうまく動かない状態では、腕を使うたびに上腕・肘・前腕に余分な負担がかかります。猫背気味の姿勢でパソコン作業を続けると、肩甲骨が外側に引っ張られた状態で固まりやすくなります。そうなると腕全体の力学的バランスがくずれ、肘の外側に負荷が集中してしまいます。
肩甲骨の動きを改善せずに肘だけをケアしても、同じ姿勢で同じ動作を繰り返す限り症状は戻ってきます。「治ったと思ったらまた再発した」という方には、こうした背景が隠れていることが少なくありません。
体幹(コア)の安定性が低いと、腕を動かす際に身体全体で力を受け止められず、その分が肘関節へのストレスとして集中します。これはスポーツだけの話ではなく、重い荷物を持つ仕事や毎日の家事にもそのまま当てはまります。
「なぜ肘が痛いのか」を本当の意味で知るためには、肘だけを見るのではなく、身体全体のつながりの中で評価することが欠かせないです。
肘の外側の痛みが2〜3週間以上続く、湿布を貼っても改善しない、夜中に痛みで目が覚める——こういった状態はすでに慢性化が始まっているサインかもしれません。テニス肘は初期であるほど回復しやすく、時間が経つにつれて腱組織の変性が進み、対処が難しくなる傾向があります。
仕事や家事で手を使わない日がない方こそ、早めに専門的な評価を受けることが根本解決への最短距離です。痛む場所だけを見るのではなく、なぜそこに負担が集中しているのかを丁寧に読み解くことが、再発しない状態づくりにつながります。
身体の使い方やくせが深く関わっていることも多いです。気になることがあれば気軽に相談してください。肘のことはもちろん、姿勢や身体全体のつながりまで含めて、ご説明させていただきます。