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ボルダリングでの手首の痛み、TFCCの対策と予防

本日の予約状況

ボルダリングをしていると、ある時から手首の小指側に違和感を感じ始めた…という経験はありませんか。「少し休めば治るだろう」と思っているうちに、気づけば何週間も痛みが続いていた、なんてことも珍しくありません。

手首に痛みを感じる場合、その場所や動作によってはTFCC損傷が関わっている可能性があります。放置すると慢性化するリスクもあるため、早めに原因を把握しておくことがとても大切です。

院長:近江

手首の痛みを抱えたまま登り続けているクライマーはとても多いです。原因を知って、適切に対処してほしいと思います

目次

ボルダリングが手首に与える負荷とは

ボルダリングは指先でホールドを握り、全体重を腕と手首で支えながら壁を登るスポーツです。一見シンプルに見えますが、手首にかかるストレスはとても多様で、かつ繰り返し加わります。一回一回の負荷は小さくても、セッションを重ねるうちにじわじわとダメージが蓄積されていきます。

手首に強いられる複合的な動き

ホールドを握るたびに手首は背屈(反る方向)・掌屈(曲げる方向)・回旋(ねじる方向)という複合的な動きを繰り返しています。

特に身体が壁から離れそうになった瞬間に手首で「こらえる」動作が入り、このとき手首の尺側(小指側)に大きなストレスが集中します。この繰り返しがTFCC(三角線維軟骨複合体)への過剰な負荷につながります。

ビギナーほど手首を酷使しやすい

経験の浅いクライマーほど、手首だけで身体を支えようとする動作パターンになりやすい傾向があります。体幹や肩甲帯でしっかり支えられていないと、その分の負担がすべて手首に集まってしまいます。

熟練者でも、難度の高いルートへの挑戦や疲労が溜まった状態でのセッションでは同じリスクがあります。

TFCCとはどこにある何という組織か

TFCCとは「Triangular Fibrocartilage Complex(三角線維軟骨複合体)」の略称です。手首の小指側にある、軟骨・靭帯・腱鞘が複雑に絡み合った重要な構造体で、手関節の安定性を保つ要となっています。

TFCCの主な役割

TFCCには大きく3つの役割があります。

  • 橈骨と尺骨(前腕の2本の骨)の遠位部をつなぎ止める安定性の確保
  • 手を回旋させる動き(ドアノブを回す・タオルを絞る動作)のサポート
  • 前腕から手首へ伝わる衝撃の吸収

これらは日常生活でもスポーツでも常に働き続けている機能であり、損傷するとあらゆる動作に支障をきたします。

急性損傷と慢性損傷の違い

損傷のパターンは大きく2つです。転倒時に手をついたり急激なねじれが加わる「急性損傷」と、ボルダリングのように繰り返しの負荷が積み重なって起こる「慢性損傷(疲労性損傷)」です。

ボルダリングに関連するTFCC損傷の多くは、この慢性的な積み重ねによるもので、「いつから痛いか分からない」という経緯で来院される方がとても多いのが特徴です。

こんな症状はTFCC損傷を疑うサイン

ボルダリング中や練習後の手首の痛みがすべてTFCC損傷というわけではありません。ただ、次のような症状が当てはまる場合は、一度しっかりと評価を受けることをおすすめします。

  • 手首の小指側(外側)を押すと痛みや圧痛がある
  • ホールドを握って体重をかけると鋭い痛みが出る
  • 前腕をねじる動きで手首に痛みや引っかかり感がある
  • 手首を動かした時にクリック音や不安定感がある
  • 安静にすると楽になるため無理をして繰り返してしまう

といった状態は注意が必要なサインです。

「痛いけど登れる」という状態が続いている方ほど、組織へのダメージが蓄積されて回復が難しくなるリスクがあります。「まだ動ける」という感覚は、必ずしも「大丈夫」を意味しません。

まず整形外科で損傷度合いを確認することが大切

TFCC損傷が疑われる場合、まず整形外科などの医療機関を受診して、損傷の程度を画像検査で確認することをおすすめします。MRIや関節造影によって、部分断裂なのか完全断裂なのか、外科的な対応が必要かどうかを判断する根拠が得られます。

外科的なアプローチが必要な段階でなければ、保存的なケアで回復を目指すことができます。その場合でも「手首だけを安静にしておけばいい」というわけではなく、上肢全体を含めた総合的なアプローチが回復の質に大きく影響します。

手首の痛みは「腕全体の問題」として捉える

ここが、この記事でとくに伝えたいポイントです。手首の痛みは「手首だけの問題」ではなく、腕全体の機能の中で起きていることとして捉える必要があります。

肩・肩甲骨が上肢全体の土台になる

手指や手首、肘など腕全体をより効率良く使うためには、その土台である肩や肩甲骨がしっかり機能している必要があります。

そもそも肩関節は、腕から先を自由に動かすためのはたらきを持っています。肩甲骨が適切に動かせていないと、そこから先の肘・手首・手指が代償的に過剰に使われてしまいます。

「手首が痛い」という症状は、肩甲骨を含めた上肢全体の機能低下が手首に集中した結果として現れているケースがとても多いです。

手首だけにアプローチしても根本的な解決にならないのは、このためです。肩甲骨が安定して動けてこそ、肘の位置が安定し、手首・手指が無駄なストレスなく機能できます。

回内・回外の筋機能が手首の保護につながる

手首の安定性に直接関わるのが、前腕の回内・回外(前腕をねじる動き)を担う筋肉群です。具体的には円回内筋・方形回内筋・回外筋などが挙げられます。これらの筋肉が十分に機能していると、手首にかかる回旋ストレスを前腕の筋肉全体で吸収・分散することができます。

逆に言えば、回内・回外の筋機能が低下していると、本来なら前腕の筋肉で受け止めるべき負荷がTFCCに直接集中してしまいます。

ボルダリングを続けていく上で手首を守るためには、回内・回外に関わる筋肉のトレーニングがとても有効な予防策になります。チューブやダンベルを使った前腕の回旋トレーニングは、シンプルですが確実に効果があります。

テーピングの活用で手首への負担をコントロールする

テーピングは正しく使えば手首への負担を大幅に軽減できます。ただし、テーピングの貼り方や方向によって手首に与える影響は変わってくるため、「とりあえず巻いておく」では効果が半減します。

回旋を制限したいのか、尺側のサポートを強化したいのか、橈尺関節の安定性を高めたいのかによって、テーピングの種類・方向・テンションは変わります。

症状と目的に応じた貼り方を知っておくことで、練習中の痛みを抑えながら適切な負荷管理ができます。自己流で貼ることに不安がある方は、専門家に一度確認してもらうことをおすすめします。

指のプーリー障害と手首の痛みは併発しやすい

ボルダリングでよく見られるもう一つの怪我に、指のプーリー障害があります。指の屈筋腱を支えるプーリー(腱鞘の一部)が損傷するもので、指の付け根あたりに痛みや腫れが出るのが特徴です。

この指のプーリー障害と手首の痛みが同時に出ているクライマーはとても多い印象があります。両者は「手指・手首への過剰な負荷」という共通の背景から生じることが多いため、一方だけをケアしても不十分なことがあります。

ボルダリングを長く続けていくのであれば、手指と手首はセットで定期的にケアを受けておきたいところです。

当院でのアプローチについて

当院では、手首の痛みに対して肩甲骨の機能・前腕の回旋筋機能・手首の安定性という流れで上肢全体を評価します。アジャストメントによって関節機能を整えながら、前腕・肩・体幹の連動を取り戻すためのエクササイズを段階的に取り入れていきます。

単に痛みをとるだけでなく、同じ怪我を繰り返さない身体づくりまでをサポートすることが当院のアプローチです。

手首の痛みを抱えたまま登り続けないために

ボルダリングは夢中になるほど楽しいスポーツです。だからこそ、少しくらいの痛みなら無視して登り続けてしまう気持ちはよく分かります。

ただ、TFCC損傷は適切なケアをしなければ慢性化し、回復までの時間が大幅に長くなることがあります。早い段階で原因を特定して適切なアプローチを始めることが、結果として最も早く復帰できる近道になります。

ひとりで抱え込まず、気になることがあればいつでも気軽にご相談ください。身体の状態をしっかり評価した後、一緒に最適なケアの方向性を考えていきます。


院長:近江

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